これまで頭頸部癌の発癌の主たる原因は喫煙とアルコール摂取とされてきた。しかし近年,これとはまったく異なる機序によって中咽頭癌が発症することが明らかになってきた。診断法には生検組織を用いてヒトパピローマウイルス(HPV)のDNAをPCRにて検出する方法,in situ hybridization法,HPVの代理マーカーであるp16免疫染色などがある。
欧米ではHPV関連中咽頭癌が中咽頭癌の約7割を占めるとの報告がある。日本ではHPV関連中咽頭癌は過去12年の間に約2倍に増加しており,現時点では中咽頭癌の約3割を占めるまでになっている(文献1)。また非喫煙者,非アルコール摂取者の中咽頭癌もそれぞれ1.3倍,4.2倍に増加している(文献1)。
これらのがんの特徴としては,若年発症,進行した内部壊死を伴う頸部リンパ節転移,手術・放射線療法・化学療法への好反応,良好な予後などが挙げられる。わが国における中咽頭癌124例の検討では,p16陰性例における3年生存率は47.2%であったのに対し,陽性例では82.9%であり,統計学的に有意差を認めている(文献1)。
性生活の多様化に伴いHPV関連中咽頭癌は今後しばらく増加していくものと思われる。しかし,同じHPV感染により発癌する子宮頸がん予防ワクチンの安全性がWHOにより確認され,わが国でも厚生労働省により認可された(現在は積極的な接種勧奨は一時差し控え)。今後このワクチンが普及することにより,いずれはHPV関連中咽頭癌も減少していくことが期待される。
1) Saito Y, et al:Cancer. 2013;119(11):2005-11.