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切除不能膵癌の最近のトピック

No.4702 (2014年06月07日発行) P.58

柳本泰明 (関西医科大学外科講師)

權 雅憲 (関西医科大学外科教授)

登録日: 2014-06-07

最終更新日: 2016-10-26

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4年ぶりに大きく改訂された「膵癌診療ガイドライン2013年版」では,局所進行切除不能膵癌・転移病変を有する膵癌の一次治療としてgemcitabine療法,gemcitabine/erlotinib療法,S-1療法が標準治療として推奨されている。最近の化学療法の進歩により切除不能膵癌で治療奏効例がみられるようになったが,生存期間中央値(MST)は6~9カ月程度にすぎず,生存期間延長のためには新たな化学療法の開発と奏効例での積極的な根治切除も視野に入れた治療戦略が必要である。
今回のガイドラインでは推奨されていないが,切除不能膵癌の新たな治療にFOLFIRINOX療法(オキサリプラチン,イリノテカン,フルオロウラシル,レボホリナートカルシウム)(文献1)が注目されている。MST:11.1カ月(海外データ)と今後最も期待される治療のひとつであるが,発熱性好中球減少症などのきわめて強い毒性もあることから,膵癌high volume centerにおける慎重な使用が必要であると思われる。そのほかにも現在保険収載されていないものとして,gemcitabine/nab-paclitaxel療法(文献2)〔MST:8.5カ月(海外データ)〕も今後導入が期待されている。このように治療選択肢が増え,膵癌治療は新たなステージに入ったと思われるが,重要なことは,各レジメンの副作用プロファイリングを熟知し,今ある治療薬をどう使い切るか,また奏効例における手術適応などが鍵となると思われる。オンコロジストの仕事はこれまで以上に責任が重くなっていくものと思われる。

【文献】


1) Conroy T, et al:N Engl J Med. 2011;364(19): 1817-25.
2) Von Hoff DD, et al:N Engl J Med. 2013;369(18): 1691-703.

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