2013年に改訂されたCKDガイドラインでも,糖尿病性腎症あるいは150mg/日以上の尿蛋白を呈するCKD患者(つまり,ほとんどのCKD患者)の降圧療法に,RA系阻害薬が第一選択として推奨されている。全身血圧とともに糸球体血圧(濾過圧)を下げることにより,蛋白尿減少効果と圧負荷に伴う糸球体硬化抑制作用が期待されている。理論上は,ACE阻害薬とARBを併用してRA系をブロックすることで,単独療法に比べて高い効果が得られると考えられるが,心血管イベントの高リスク糖尿病患者を対象としたONTARGET試験では併用療法による上乗せ効果は認められず,重篤な有害事象が多かったとされている(文献1)。
最近報告されたVA NEPHRON-D試験でも,両者の併用は高カリウム血症や急性腎不全のリスク上昇をもたらしたため,試験は予定より大幅に短縮され打ち切られた。そこまでの解析においても,両者の併用にリスクを上回る臨床的優位性は認められなかった(文献2)。
糖尿病性腎症では4型尿細管性アシドーシスなどを介して高カリウム血症を生じやすい素地があることから,併用がほかの原疾患より難しくなったことが推察される。現在,IgA腎症などの慢性糸球体腎炎を中心に,両者を併用する専門医も依然多くみられており,今後原疾患別の詳細な検討が求められるが,現時点では併用についてこれまで以上に慎重に判断する必要があろう。
1) Mann JF, et al:Lancet. 2008;372(9638):547-53.
2) Fried LF, et al:N Engl J Med. 2013;369(20): 1892-903.