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3Dプリンターで腎臓作製?

No.4741 (2015年03月07日発行) P.47

横尾 隆 (東京慈恵会医科大学腎臓・高血圧内科教授)

登録日: 2015-03-07

最終更新日: 2016-10-26

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最近のテクノロジーの進化は著しく,3Dプリンターでかなり精巧に3次元構造が復元できるようになった。これを用いて殺傷能力を持った銃をプリントアウトしたことで日本人男性が逮捕されたニュースは記憶に新しい。この3Dプリンターを再生医療領域で活用することが期待され,事故であるいは先天的に欠損した耳介の健康側をCTでスキャンして3Dプリンターでプリントアウトし,患側に移植するという試みが行われている。
ミクロの領域までプリンターで再現することは不可能であると考えられていたが,最近,腎臓を再生したとの報道があった(文献1)。
米国Wake Forest大学泌尿器科のAtala教授は,独自で改良した3Dプリンターを用いて多くの臓器が作製できると報告してきたが,ついには腎臓も再生できるというのである。まだ論文として公表されていないため,にわかには信じがたいが,2013年の米国腎臓学会(Kidney Week 2013)に招待され,その全容を講演している。
これによると,この再生腎臓は移植するとしっかり尿をつくることが可能であるという。機能は血栓形成のため3日間しか持続しないとのことであるが,彼が提示した再生腎臓の生検組織像は正常のものと区別がつかないほど精巧なものであった(文献2)。会場がどよめいたのは言うまでもない。懐疑的に評価する声が多いが,もし事実であれば臓器不足を解消できる可能性がある。真偽が明らかになることを期待して待ちたい。

【文献】


1) [http://www.ted.com/talks/anthony_atala_printing_a_human_kidney]
2) [http://ajkdblog.org/2013/11/12/kidney-week-2013-need-an-organ-print-an-organ/]

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