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ゲノム解析による肝細胞癌における遺伝子異常の同定

No.4763 (2015年08月08日発行) P.51

建石良介 (東京大学消化器内科特任講師)

小池和彦 (東京大学消化器内科教授)

登録日: 2015-08-08

最終更新日: 2016-10-26

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近年,高速シークエンサーを用いた全ゲノムシークエンス解析や,全エキソームシークエンス解析が種々の癌腫について精力的に行われている。国際がんゲノムコンソーシアム(ICGC)は,主要ながんについて500症例を目標に解析し,ゲノム変異の包括的なデータベース化を行う16カ国と,EUの参画する国際共同プロジェクトである。
2014年11月,ICGCの一環として国立がん研究センターと東京大学の共同研究グループから503例の肝細胞癌のゲノム解析結果が報告(文献1)された。そこでは,染色体のテロメアを伸長するテロメラーゼにおいて,プロモーター領域の変異,コピー数増加,HBV遺伝子挿入による活性化を合わせて約70%の症例で遺伝子異常が認められ,最も頻度の高い遺伝子異常であることが確認された。また,今回新たに同定された13個を含む30個のドライバー遺伝子と,それらが組み込まれた11のパスウェイが同定された。一方で,既存の分子標的治療薬のターゲットとなる遺伝子異常の頻度が低いことも判明している。
前述の503例に米国人の105例を加えて人種間の突然変異のパターンについて解析を行ったところ,日本人に特有の遺伝子変異パターンが見出された。これらは,肝炎ウイルスとは無関係の未知の発がん要因が存在する可能性を示唆している。これらの知見が,現在停滞している肝細胞癌における分子標的治療薬の開発に大きく貢献することが期待されている。

【文献】


1) Totoki Y, et al:Nat Genet. 2014;46(12):1267-73.

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