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魚鱗癬の病態としての皮膚バリア障害:「脂質の時代」を迎えた表皮の生物学

No.4768 (2015年09月12日発行) P.53

秋山真志 (名古屋大学皮膚科教授)

登録日: 2015-09-12

最終更新日: 2016-10-26

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魚鱗癬は,体表面の広い範囲で角層が肥厚する,主に遺伝性の疾患である。魚鱗癬の中でもQOLに大きな影響をきたす重症型の病型群が常染色体劣性先天性魚鱗癬(autosomal recessive congenital ichthyosis:ARCI)と呼ばれるグループであり,道化師様魚鱗癬,葉状魚鱗癬,先天性魚鱗癬様紅皮症が含まれる。近年,ARCIの病因が次々と明らかにされ,新しい病因論に基づいて2010年,魚鱗癬の病名と病型分類が国際的に統一,改訂された(文献1)。
現在解明されているARCIの病因分子は,ABCA
12, transglutaminase 1, epidermal lipoxygenase-
3, 12R-lipoxygenase, CYP4F22, NIPAL4, ceramide synthase 3, PNPLA1, lipase Nの9種であるが,これらのうち,脂質輸送蛋白ABCA12は角質細胞間脂質と角化した細胞の表面の脂質層(corneocyte lipid envelope)の構成成分であるセラミドなどの脂質を供給し,epidermal lipoxygenase-3, 12R-lipoxygenase, ceramide synthase 3はセラミドの生成に働くことがわかっている。transglutaminase 1も角質細胞の細胞膜とセラミドの結合に重要な役割を果たしていることが知られ,そのほかの病因分子も脂質生成に働いていると推測されている(文献2)。
改めて脂質が皮膚バリアの構成分子として,また,表皮細胞の分化調節のメディエーターとして大きな働きをしていることが示されたと言える。今後,脂質を標的とした新規治療法の開発が期待される。

【文献】


1) Oji V, et al:J Am Acad Dermatol. 2010;63(4):607-41.
2) Akiyama M:Biochim Biophys Acta. 2014;1841(3):435-40.

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