原著は2013年刊。著者はエボラ・ウイルスの共同発見者の1人であり、UNAIDS初代事務局長として長くエイズ対策に貢献。2013年、第2回野口英世アフリカ賞受賞。現在、ロンドン大学衛生・熱帯医学大学院学長(ピーター・ピオット 著、宮田一雄・大村朋子・樽井正義 訳、慶應義塾大学出版会、2015年刊)
20世紀後半に登場し、世界中を震撼させた感染症は何かと問われれば、多くの人はまずエボラ出血熱(以下、エボラ)とエイズを挙げるであろう。ピーター・ピオットは、この2つの感染症に文字通り命がけで取り組み、大きな功績を成し遂げた医師である。
このたび、ピオットの回顧録の日本語版『NO TIME TO LOSE:エボラとエイズと国際政治』が刊行された。感染症のみならず国際的な保健政策分野で仕事をされる方、さらに医学・医療に関わる方に幅広くお勧めしたい。
個人的には、後半のエイズ部分はある程度知っている分野でもあり、特にエボラ部分がお勧めである。ピオットが国際保健分野で果たしてきた役割は非常に大きい。もちろん彼個人の資質や見識、情熱などが主たる原動力となった。しかし、彼がベルギー人であることも背景因子の1つとして重要である。
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