1981年公開、熊井 啓監督、仲代達矢主演のモノクロ作品。第5回日本アカデミー賞で優秀作品賞等を受賞。同監督は『帝銀事件 死刑囚』、『日本列島』で社会派監督として注目され、『黒部の太陽』、『天平の甍』、『海と毒薬』などの大作を手がけた(DVD:カルチュア・パブリッシャーズ、2002年発売)
昭和24(1949)年に労働組合と対立していた国鉄初代総裁の下山定則氏が、失踪の翌日に線路上で機関車に轢断された死体となって発見された。東京大学で司法解剖が行われ、全身に見られる多数の損傷には生前の損傷であることを示す出血がほとんど認められないことから、執刀医は下山氏が別の場所で死亡し、死体が線路上に遺棄されたと考えた。
ところが、まもなく起こった三鷹事件(無人列車暴走脱線転覆事故)で複数の死体を解剖した慶應義塾大学の教授は、瞬間的に心臓が潰されればほかの損傷に出血は生じないとの知見を得て、下山氏も生前に轢断されたのであって、自殺の可能性が高いと反論した。この、いわゆる下山事件をめぐって、当時の日本法医学会で論争が繰り広げられたと聞く。
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