画像検査の普及や進歩は医学に多大な貢献をしてきたが,同時に,先進各国では防衛的医療の蔓延や,外来の出来高払い制度などの複合的社会要因により,「エビデンスに基づいた適切な適応ではない」検査も増え,検査総数が増加している。近年の画像検査の20%以上は臨床的貢献が不明瞭と指摘されており(文献1),医療費高騰,不必要な医療被ばくなどの負の側面を考えると,是正は喫緊の課題となっている。最適な患者に最適な検査を提供するためには,すべての施設において,現場で依頼医と放射線科医が直接意思疎通を図れば有用であるが,それを実行するのは難しく,「医療現場で自律的に適切な画像検査オーダーが実行されるよう支援するITシステム」の導入が必要であると考えられている。
米国では,電子カルテで画像検査オーダー時にAmerican College of Radiology(ACR)の検査適応ガイドラインであるAppropriateness Criteriaを参照する「ACR SelectTM」(文献2)という診療支援システムが開発され,メディケアでは近々,画像検査の診療報酬にシステムの経由を外来で必須化する。European Society of RadiologyもACRと連携し,ガイドラインとシステムの構築が始まっている。
日本は人口当たりのCT・MRI保有台数が世界一であり,年間3500万件以上のCT・MRI検査が施行されている。個々の検査プロトコルの最適化に加え,検査適応を最適化する方法について,日本でも検討することが求められている。
1) Hendee WR, et al:Radiology. 2010;257(1):240-5.
2) ACR SelectTM. [http://www.acr.org/quality-safety/appropriateness-criteria/acr-select]