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特発性細菌性腹膜炎  【非代償性肝硬変例の約10~20%にみられる合併症で,早期の抗菌薬治療が鍵となる】

No.4810 (2016年07月02日発行) P.49

榎本平之 (兵庫医科大学内科学肝・胆・膵科准教授)

西口修平 (兵庫医科大学内科学肝・胆・膵科主任教授)

登録日: 2016-07-02

最終更新日: 2016-10-29

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特発性細菌性腹膜炎(SBP)は,腹水を有する非代償性肝硬変例の約10~20%に認められる合併症である(文献1)。「特発性」の文字が示すように,消化管穿孔のような明らかな感染の原因を伴うことなく,細菌性の腹膜炎を生じる。SBPは腹膜炎であるので発熱や腹痛が最も多い症状であるが,消化管穿孔による二次性腹膜炎のように多量の細菌侵入を生じないため,顕性症状を欠く例にしばしば遭遇する。SBPの診断には腹水中の好中球数の測定と穿刺液の細菌培養が行われ,腹水中の多核白血球数が250/mm3以上かつ細菌培養陽性であれば診断は確定する。しかし,腹腔穿刺液の細菌培養には,結果の判明に数日以上を要するという大きな問題がある。
SBPの多くは早期の抗菌薬治療で救命可能であるが,治療の遅れは致死的となりうる。そのため最近では,CT検査で消化管穿孔などによる二次性腹膜炎を鑑別し,腹水中の多核白血球数が250/mm3以上で外科的に治療可能な腹腔内感染がなければ,細菌培養の結果を待たずにSBPと診断して直ちに治療に入ることが推奨されている(文献1)。SBPの起因菌の多くは腸内細菌である大腸菌やクレブシエラなどのグラム陰性桿菌であり,第3世代のセフェム系抗菌薬が第一選択とされる。ちなみに,採取した腹水をベッドサイドで直接血液培養用のボトルに入れることで,起因菌の検出率が向上するとされる。

【文献】


1) 日本消化器病学会, 編:肝硬変診療ガイドライン2015. 改訂第2版. 南江堂, 2015.

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