【概要】医療経済研究機構がこのほど、経済協力開発機構(OECD)の新基準に準拠した日本の保健医療支出を公表した。新基準で新たに推計対象となった介護サービスを含めると、2014年度の日本の保健医療支出は対GDP比で11.4%と加盟国中3位となった。
OECDの保健医療統計は「A System of Health Accounts(SHA)」と呼ばれるガイドラインに基づいているが、2014年度の推計では基準が変更。「長期医療(保健)」の範囲に従来の「医療の有資格者が提供するサービス」に加え、食事・入浴など「ADL(日常生活動作)に関するサービス」が含まれることになり、日本の介護保険サービスの多くが保健医療支出として推計された。
保健医療支出の推計値(表)をみると、新基準では旧基準に比べて総支出が約6兆円増加。対GDP比は、旧基準では10.1%でOECD加盟35カ国中10位だったが、新基準では11.4%で同3位となった(図)。
●医療経済研究機構「国際比較は慎重に」
実際の日本の保健医療支出については、公表値より高いとの指摘が以前からあった。日本総研が昨年9月に公表した報告書では、日本の保健医療支出は「介護」を過少に推計している一方で、設備投資費用などが対GDP比で0.5~0.9%程度混入していると指摘。実際の対GDP比は11.0~11.4%と推計した上で、「日本は低医療費国」との認識を根本的に転換するよう訴えている。
ただし、新基準に準拠したデータの公表は今回が初めてであり、医療・介護保険制度は各国で大きく異なる。このため医療経済研究機構は、数値の国際比較について「慎重に行う必要がある」としている。
対GDP比保健医療支出は、医療政策を論じる際によく用いられるデータだけに、今回の推計値が政策論議の場に及ぼす影響が注目される。