周産期医療の発展に伴い,長期人工呼吸器管理を要する小児呼吸不全症例が増加している。挿管チューブの素材や固定方法の進歩により,数カ月間の経口気管内挿管は許容しうるが,数年単位の場合は気管切開が必要となる。特に在宅管理をめざす症例の場合,退院後の安全な気管切開管理は重要である。気管切開管理の合併症として,肉芽形成による気管孔狭窄,カニューレ交換時の出血があるが,これらは在宅管理を行う家族や小児科・内科の訪問診療医にとって厄介な問題である。
肉芽形成や皮下への誤挿入を予防する気管切開法として,1998年,KoltaiらによってStarplasty法が報告された。皮膚をX字,気管を十字に切開し,皮弁の頂点を軟骨弁の間に,軟骨弁の頂点を皮弁の間にそれぞれ縫合することで,八角形の気管孔を作製する。これにより皮膚と気管粘膜の上皮同士が気管孔全周にわたり連続し,肉芽形成が予防できる。
当科で施行したStarplasty法の20例とそれ以外の気管切開18例とを比較したところ,手術時間は33分 vs. 45分と同程度であり,Starplasty法に限るとラーニングカーブを描きながら短縮していた。気管孔肉芽の発生割合は,前者が15%,後者が55%と有意に肉芽発生率が低かった。Starplasty法で肉芽形成を認めた症例は痙攣や不随意運動を伴っており,カニューレによる持続的な機械的刺激が肉芽形成の原因と考えられた。
【参考】
▶ Koltai PJ:Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 1998;124(10):1105-11.
【解説】
1)塩野 理,2)折舘伸彦 横浜市立大学耳鼻咽喉科・ 頭頸部外科 1)講師 2)教授