肝門部領域胆管癌は,肝動脈,門脈に容易に浸潤し手術が困難と判断されることも多い。外科的手術が根治を期待できる唯一の治療法であることより,肝動脈,門脈合併切除再建によるR0手術がいくつかの施設において検討されている。
肝動脈,門脈合併切除術は,主に左側優位で右肝動脈に浸潤している症例に対する左側肝切除に適応されることが多い。術前はMDCTから立体的な走行,位置関係を把握し浸潤の有無を診断する。右肝動脈後区域枝の走行には特に注意が必要で,門脈のsupraportal sideかinfraportal sideかで手術の難易度,アプローチが異なる1)。また再建に使用する可能性のある中枢側の動脈として左肝動脈,右胃動脈,右胃大網動脈,胃十二指腸動脈などの長さ,径も把握しておく必要がある。Naginoらは50例の肝動脈,門脈合併切除例において,R0切除率は66%,1年,3年,5年生存率は,79%,36%,30%,合併症発症率は54%(27例),周術期死亡率は2%(1例)であったと報告している。短期成績が良好であった要因として,肝動脈再建に起因する合併症を認めなかったこと,門脈切除再建手技が安定していたこと,胆道癌肝切除の周術期管理が改善されたことなどと考察している2)。
現在,胆道癌の領域においても化学療法の進歩とともに複数の術前術後補助化学療法の臨床試験が実施されている。今後,高難度手術と集学的治療による,さらなる成績の向上が期待される。
【文献】
1) Yoshioka Y, et al:World J Surg. 2011;35(6): 1340-4.
2) Nagino M, et al:Ann Surg. 2010;252(1):115-23.
【解説】
1)藤山泰二,2)高田泰次 愛媛大学肝胆膵・乳腺外科 1)准教授 2)教授