心房細動は脳梗塞の危険因子とされ,従来,抗凝固薬であるワルファリンが使用されてきた。しかし,ワルファリンは頭蓋内出血などの出血性合併症のリスクが高く,PT-INRのコントロールや食事制限が必要であるなどの問題点がある。
こういった状況において,直接トロンビン阻害薬であるダビガトランの登場を皮切りに,第Ⅹa阻害薬であるリバーロキサバン,アピキサバン,エドキサバンといった新規経口抗凝固薬(NOAC)が相次いで上市され,心房細動に対する抗凝固療法が一変することとなった。これら4薬は,いずれも認可にあたってワルファリン治療群と比較する大規模臨床試験が実施され,脳卒中の発症予防効果はワルファリンと同等かそれ以上,出血性合併症は同等かそれ以下,頭蓋内出血は有意に低下することが示されている。
これらの結果をふまえて『脳卒中治療ガイドライン 2015』では,CHADS2スコア2点以上の場合はNOACもしくはワルファリンが勧められ,CHADS2スコア1点ではNOACが勧められることとなった。NOACは上述のワルファリンの欠点を克服することで,抗凝固療法の選択肢を増やし,ワルファリンが使いづらかった患者にも抗凝固療法を行うことを可能にしたと言える。
一方,動物実験レベルでは,ワルファリンまたはNOAC投与下のラット脳虚血モデルにおいて,NOACはワルファリンよりもneurovascular unitに保護的に作用することで,rt-PA投与後の出血性梗塞を抑制する可能性が示唆されており1),さらなる病態解明が期待されている。
【文献】
1) Kono S, et al:Stroke. 2014;45(8):2404-10.
【解説】
森原隆太 岡山大学脳神経内科