安全保障と学術の関係に関する日本学術会議(大西隆会長)の議論が大詰めを迎えている。
会議は1950年、67年に「戦争を目的とする科学研究を絶対に行わない」との声明を発表した。しかし近年、軍事的な研究と民生的な研究に明確に線引きを行うことが困難との問題意識から、会議は昨年5月、法学や物理学、情報学、都市工学、医学などの研究者15人からなる「安全保障と学術に関する検討委員会」(委員長=杉田敦法政大法学部教授)を設置。医学界からは森正樹阪大教授、向井千秋東京理科大特任副学長が参加した。そして先月、軍事研究に慎重な姿勢を示した「中間まとめ」(表)を公表した。
検討委員会の議論は今、全国の大学から注目を集めている。その背景には、防衛装備庁が2015年度から始めた「安全保障技術研究推進制度」がある。
推進制度は自衛隊が使用する武器や機械、航空機などの「装備品」に適用可能な基礎研究に研究費を支給する制度。予算は初年度3億円、16年度6億円だったが、17年度予算案は110億円に拡充。これに応募する大学がある一方、研究者の応募を禁じる大学もあり、判断が分かれている。
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