経皮的内視鏡下腰椎椎間板摘出術(PELD)は,1970年代に導入された経皮的髄核摘出術を原型として発展した低侵襲手術法で,細径の専用内視鏡下で健常な椎間板には侵襲を加えず,脱出した椎間板ヘルニア塊そのものを摘出する方法である。
腰椎椎間板ヘルニアに対する標準的治療として確立された顕微鏡下椎間板摘出術と比較して,本法では1cm未満の小切開で後側方からアプローチし椎間板内に侵入するため,腰部筋組織への侵襲が少ない。さらに局所麻酔でも治療ができるため,早い社会復帰を望む若年者やスポーツ選手に適しているだけでなく,従来の方法では摘出が困難であった肥満患者,緊急手術を要する症例や全身麻酔のリスクの高い高齢者にも有利である1)。
一方で,本法は進入方向が限局される上に,細い外套の中で操作を行うので,大きくて固いヘルニアや,椎間板高位から上下に逸脱する症例には向かない。このような症例には,進入方向の自由度が高く,立体視が可能な顕微鏡手術が有利である。両手技を比較したメタ解析では,下肢痛の改善,合併症率,再発率は同等であるものの,手術時間と入院期間は有意にPELD群で短いことが示され2),適切に症例選択を行えば,PELDが有力な治療手段になることが明らかとなっている。今後,腰椎椎間板ヘルニアに対する有力な治療法のひとつとしてさらに発展することが期待される。
【文献】
1) Mizuno J, et al:No Shinkei Geka. 2016;44(3): 203-9.
2) Ruan W, et al:Int J Surg. 2016;31:86-92.
【解説】
1)八木 貴,2)木内博之 山梨大学脳神経外科 1)学部内講師 2)教授