パートナーであるサルトルが老いてゆく姿をみて、著者自らの苦悩に基づいて執筆した書(シモーヌ・ド・ボーヴォワール著、朝吹三吉訳、人文書院、1972年刊)
2016年12月、パリでの在宅入院制度の世界大会に参加した。とても寒いパリであったが、空き時間を利用してパリ郊外の墓地を訪問した。サルトルとシモーヌ・ド・ボーヴォワールが眠る墓地を訪問するつもりであった。イヴ・モンタン、ショパン、エディット・ピアフの墓にはたどり着いたが、残念ながら行くことができなかった。
パリの墓地は清貧の中、静けさがあった。東大教授の飯島先生と通訳の若き女性と墓を探しながら歩く時間は心休まるものがあった。私自身も老いていく中で考えさせられた。医学をはじめ、民俗学、文学に至るまで、あらゆる資料をもとに、著書の中で老いについて自らの悩みをあぶりだそうとするボーヴォワール。私の青春時代の花形であった彼女が生活協同者である老いゆくサルトルを観察し、自分の姿があった。
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