胎児期・出生時超音波スクリーニングにて発見されるCKD stage 3以上と診断された先天性腎尿路奇形(CAKUT)は全体の約30%である
CAKUTに起因する末期腎障害(ESRD)に関しては,早期発見・早期介入により予後やQOLの改善が期待される
ESRDを減らすために,小児泌尿器科医,産科医との連携はもとより,出生後早期に無症状のCAKUTを発見するシステムの確立が望まれる
先天性腎尿路奇形(congenital anomalies of the kidney and urinary tract:CAKUT)は,腎実質の異常(低・異形成腎,無形成腎など)および尿路の異常〔腎盂尿管移行部狭窄,後部尿道弁,膀胱尿管逆流(vesicoureteral reflux:VUR)など〕からなり,その表現型は多彩である。CAKUTの頻度は3~6/1000出生1) とされ,腎尿路以外の異常と合併してみられることも少なくない。CAKUTの診断に関して現在では,出生後の健診における一般診察や尿検査,超音波検査に加え,胎児超音波検査による胎児期診断が重要な役割を担いつつある。
胎児に対する腎超音波スクリーニングは,一般的に産科医によって胎児の発育状況の観察に付随した妊娠管理の一環として行われている。このため,スクリーニングとしての特異度は高いが感度は低い。Ishikuraら2)の行った全国アンケート調査の結果では,CKD stage 3以上と診断されたCAKUTのうち,胎児期・出生時超音波スクリーニングで見つかったものは31.7%であった。ただし,末期腎障害(end stage renal disease:ESRD)に至るCAKUTの35.2%を低・異形成腎が占めており3) ,胎児超音波検査において腎サイズの評価がなされていない現状を反映している可能性がある。
胎児超音波検査において観察すべき項目を表1に示す。
超音波検査の進歩により,腎盂・腎杯の拡張は在胎20週頃から指摘されることも多い。水腎症は,腎盂前後径(anterior posterior diameter:APD)やSFU分類に準じた方法で評価される。また,この頃から皮質と髄質の対比が可能となり,輝度の評価も行えるようになる。通常,腎のエコー輝度は,肝と脾よりやや低い。高輝度のときは,腎異形成,尿路閉塞などを疑う。
多発性嚢胞腎(polycystic kidney disease:PKD)は輝度の上昇に加え,腎臓が大きく,充実性腫瘤として観察される。また,腎実質の形態が大小複数の嚢胞からなる場合,多嚢胞性異形成腎(multicystic dysplastic kidney:MCDK)が疑われる。
拡張した腎盂と膀胱との間に嚢胞性あるいは管腔状病変を認める場合,水尿管が疑われる。一方,拡張した尿管を認めるものの腎盂の拡張が明らかでない場合,重複腎盂・尿管の可能性がある。
巨大膀胱を認める場合には,尿道の通過障害を考える。多くの場合,後部尿道弁を原因とし,狭窄が強い場合には腎不全に至ることもある。巨大膀胱を認めるものの羊水量が正常の場合,prune belly症候群の可能性がある。また,羊水過多をきたす消化管閉塞を合併する場合も羊水過少が明らかとならないことがある。
羊水量は,胎児尿がその主成分となる在胎16~18週以降に胎児診断において有用となる。後部尿道弁などの下部尿路狭窄による巨大膀胱は妊娠早期に腎機能低下をきたすだけでなく,羊水過少から肺低形成となる予後不良な胎児泌尿器系異常であり,分娩を急いだり,胎児治療が行われたりすることもあるため,羊水量の評価は非常に重要である。
腎尿路閉塞性疾患のほか,低・異形成腎のスクリーニングのためには腎のサイズを評価したいところであるが,在胎28週頃を境に胎児骨の影響で腎の描出が困難になるとされる。このため,長軸の描出が難しく,厳密な評価が難しい。一方,骨形成前の在胎24週頃では測定誤差が大きく,やはり厳密な評価は困難である。腎サイズの左右差に着目する方法なども報告されているが,基準値の作成には至っていない。
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