Ⅰ期非小細胞肺癌に対する標準治療は手術であるが,手術不能例に対しては根治的放射線治療が推奨されている1)。従来型の放射線治療では,他病死も多いが線量不足のために局所制御が不十分で,5年生存率10~30%程度と不満足な成績であった。それが後述する定位放射線治療により局所制御率80~95%,5年生存率30~70%程度に向上した2)。
定位放射線治療は当初,頭蓋内病変に対して開発された照射技術で,高い精度で病変に放射線を集中させ,周辺正常組織の有害事象を減少させる一方,腫瘍への照射線量を増加させ,局所制御を向上させることを目的としている。体幹部に対しては1990年代より臨床応用され,2004年からは5cm以下の原発性・転移性肺癌に保険適用され,治療件数は著増している。線量分割は,わが国の臨床試験JCOG04033)では48Gy/4fr/4~8日,北米の臨床試験RTOG02364)では60Gy/3fr/8~14日など,短期間で高線量を照射する治療法で,当該臨床試験でも示されている通り,患者への負担は少ない。
今後,高齢者の肺癌の増加が予想されることから,低侵襲で行える定位放射線治療が注目されている。
【文献】
1) 日本肺癌学会, 編:肺癌診療ガイドライン2013年版. 2013.
2) Onishi H, et al:J Thorac Oncol. 2007;2(7 Suppl 3):S94-100.
3) Nagata Y, et al:Int J Radiat Oncol Biol Phys. 2012;84(Suppl):S46.
4) Timmerman R, et al:JAMA. 2010;303(11): 1070-6.
【解説】
待鳥裕美子 都立駒込病院放射線診療科治療部