(千葉県M)
(1)HPKIの概略
HPKIとは保健医療福祉分野の公開鍵基盤(Healthcare Public Key Infrastructure)の略称です。厚生労働省の医療情報ネットワーク基盤検討会が,今後の医療分野における情報技術の進展を見据えて,2004年9月の最終報告書の中で「医療従事者が勤務する医療現場において電子化による効果を最大限に発揮させながら運用するための仕組みとして,署名自体に公的資格の確認機能を有する保健医療福祉分野の公開鍵基盤の整備を目指していくことが必要である」と提言したことから,HPKIの具体化に向けた検討が開始されました。
①HPKIの仕組み
HPKIは,厚生労働省が所管する医師をはじめとする医療分野の26の国家資格を電子的に証明することができる仕組みを持っています。このため,これらの国家資格を審査するための基準が,厚生労働省の「証明書ポリシ」というもので定められており,それに準拠しているかを確認する「準拠性監査」があります。この準拠性監査に合格すれば,厚生労働省が運営する「認証局が正しいと証明するための認証局(ルート認証局)」から電子的な認可を受けることができます。これらの仕組みは,国際標準であるISO17090に則って整備されています。
日本医師会が進めている電子認証HPKIは,2009年に準拠性監査に合格し,厚生労働省のルート認証局から電子的な認可を受けました。その後,2013年に本格的な業務を開始するため,日本医師会に内部付属機関の電子認証センターを設置し,医師の国家資格を電子的に証明するHPKIの電子証明書をICカードに格納して,日本医師会の会員・非会員を問わず国内の医師に提供しています。これが,「医師資格証」になります。
②HPKIの機能
HPKIの機能は大きく2つあります。
1つは「電子署名」であり,その名の通り,電子的に作成された文書に対して,「確かに私が作成した」と証明するための印鑑の機能になります。HP KIの場合,これに加えて医療分野の国家資格,たとえば医師資格証の場合は医師であることも同時に証明します。また,一度,電子署名が付された電子文書が,その後,変更や改ざんされた場合,検知することが可能になります。このため,電子署名を付すことで,いわゆる電子保存の三原則の中の「真正性」の一部を満たすことができます。
もう1つは「認証」であり,電子的な通行証として用いられ,たとえば,ITを用いた地域医療連携システムで患者情報等にアクセスする際に用いることができます。患者情報等にアクセスする場合,HPKIの認証機能を用いてアクセスすれば,アクセスしてきた者が確かに本人であり,医療分野の国家資格を保有している者であることを同時に確認できます。このため,たとえば,医師しか閲覧してはいけない機微な情報があった場合,本人であって,かつ,情報の閲覧権限を持つ医師であることが確実に確認できます。
このように,ネットワークという相手の顔が見えない電子の世界において,本人性の確認とともに,医療分野の国家資格を電子的に確実に確認,証明するのがHPKIの役割と機能になります。
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