株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

(4)インフルエンザワクチンの有効性と将来展望 [特集:そこが知りたい!インフルエンザ診療]

No.4728 (2014年12月06日発行) P.41

川名明彦 (防衛医科大学校病院感染症・呼吸器内科診療科長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-16

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • next
  • 健康な小児や,65歳未満の健康成人においては,不活化インフルエンザワクチン接種により十分な抗体価の上昇がみられ,一定のインフルエンザ発症予防効果が得られる

    慢性合併症を有する成人や,乳児,65歳以上の高齢者などでは,ワクチン効果が低下する。免疫抑制状態の宿主も同様にワクチン効果が低下する

    今後は,4価ワクチンの導入,培養細胞を用いたワクチンや,新しい機序のワクチンの開発にも期待が持たれる

    1. インフルエンザワクチンの有効性

    インフルエンザワクチンの有効性については,これまでに膨大な検証が行われてきているが,被接種者の年齢,免疫状態のほか,流行株とワクチン株の類似性,診断方法(臨床診断か,ウイルス学的診断か),対象とする型(A型かB型か),ワクチンの製造方法(不活化,生,アジュバント添加)など,様々な因子の影響を受けるため,その解釈には大きなばらつきが生じる。ここでは,米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)の予防接種実施に関する諮問委員会(Advisory Committee on Immunization Practices:ACIP)の季節性インフルエンザワクチンに関する勧告1)に引用されている文献を中心に,その有効性を示す。ワクチンは,わが国で用いられている不活化ワクチンを対象とした。

    1 健康な小児

    6カ月以上の健康な小児の場合,推奨量のワクチンを接種すると一般的には感染防御レベルの抗体が産生される。インフルエンザA(H1N1)pdm09の単価ワクチンを2回接種した小児では80~95%で感染防御レベルの抗体産生が観察されており2) ,実際のワクチン効果については,6カ月~6歳未満児を2007~08年,2008~09年の2シーズン観察した報告では,接種群でインフルエンザ感染が43%減少したとしている3)
    また,1~15歳児を1985~90年の5シーズン観察した報告では,接種群でインフルエンザ感染が77%減少したとしており4),一般に,年長児に比較して年少児(乳児)のワクチン効果は劣ることが示唆されている。
    2012年のレビューでは,ワクチン接種後のインフルエンザ発症は,健康な6~23カ月児で40%減少,24~59カ月児で60%減少とされた5)。健康な小児に比較し,インフルエンザ重症化のハイリスク小児(慢性の基礎疾患を持つ児など)は,ワクチン接種後の抗体産生が低いとする報告がある。

    残り3,515文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top