慢性閉塞性肺疾患(COPD),慢性腎臓病(CKD)に高率に骨粗鬆症が合併することは確立されている
高血圧症,睡眠時無呼吸症候群,睡眠障害にも骨粗鬆症が合併する
脂質異常症と骨粗鬆症の関連は不明確だが,動脈硬化性疾患を伴う場合は骨粗鬆症合併率が高い
糖尿病以外の生活習慣病で骨粗鬆症が高率に合併するのは慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)と慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)である。高血圧症,睡眠時無呼吸症候群,睡眠障害についても,骨粗鬆症との関連を示した成績が存在する。一方,脂質異常症については,それ自体はむしろ骨密度高値や低骨折リスクとの関連が報告されている。本稿では,COPDと高血圧に合併する骨粗鬆症を中心に概説する。
COPDは,たばこ煙を主とする有害物質を長期に吸入曝露することで生じる肺の炎症性疾患であり,主症状は,慢性の咳・痰,労作時呼吸困難など,進行性の気流閉塞に伴う呼吸器症状である。しかし近年では,虚血性心疾患やサルコペニアなど,多様な肺外合併症を有する全身疾患であると認識されている。
骨粗鬆症もまた,COPDの合併症のひとつである1)。COPDは増加の一途をたどり,2011年のWHOの調査では全世界の死因の第4位,わが国でも死因の第9位,男性では第7位と上位に位置づけられている。わが国での疫学調査では,40歳以上のCOPD有病率は8.6%であるが,そのうち既にCOPDと診断されていたのは9.4%にすぎず,有病率の高さと診断率の低さが問題視されている。
COPDの骨粗鬆症合併率に関しては9~69%と幅広い数字が報告されているが2),米国の骨粗鬆症専門クリニックの検討によると,男性における続発性骨粗鬆症の原因のトップはCOPDであり,頻度はステロイド性骨粗鬆症を上回るとされている3)。英国の疫学的検討では4)COPDの骨粗鬆症性骨折のオッズ比は1.61,デンマークの検討では5)全骨折のオッズ比は1.89と報告されている。
COPD症例を対象とした椎体骨折の検討では,24~63%に骨折が認められているが,COPDにおいては腰椎骨折より胸椎骨折が多いことが特色と考えられている。米国の50歳以上のCOPD男性312例(平均年齢69歳)の検討では,腰椎骨折16.5%に対して,胸椎骨折は49%に認められた6)。大腿骨近位部骨折に関する詳細な検討は少ないが,大腿骨骨折に対する手術を受けた男性の47%がCOPDであったという米国の報告もある7)。
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