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子宮頸がんワクチン接種後の神経障害【本疾患の主病態は自己免疫性の脳炎・脳症と考えられ,適切な治療が必要】

No.4856 (2017年05月20日発行) P.52

荒田 仁 (鹿児島大学神経内科)

登録日: 2017-05-16

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近年,子宮頸がんワクチン(HPVワクチン)接種後に,頭痛,四肢疼痛などが出現し,その後に運動障害,不随意運動,てんかん,感覚障害,思考能力の低下,睡眠障害,倦怠感,立ちくらみ,発汗障害,登校困難などが続発する例が相次いで報告されている。筆者らの50人近くの診療経験では,脳症と自律神経障害が主体の例が多い。本疾患の場合,日内変動はあるものの症状が長期に継続してみられ,日によってまったく症状が消失する例はほかの疾患と考えられる。

本疾患の病態は,免疫学的機序によるびまん性脳障害と考えられ,従来の神経学的な診察法が通用しないため,心因性のものと診断されがちである。患者の神経徴候は,橋本脳症など,ほかの自己免疫性脳症と類似点が多く,通常のMRI検査や髄液検査では異常を認めないことが多いが,SPECTでは多発性の脳血流低下,表皮内神経線維密度の低下を認め,各種自己抗体(抗ganglioside抗体,抗ganglionic AChR抗体など)が陽性となる症例が多くみられる。患者髄液中の髄液GluR抗体の陽性率も高く,IL-4やIL-13などが有意に上昇しているとの報告もあり1),自己免疫機序の裏づけも出てきた。

HPVワクチンと疾患の直接の関連については,動物モデルでワクチン投与群に視床下部障害が多いことが近年報告された。全体的なメカニズムの解明により,治療への道筋が明らかとなることが期待される。

【文献】

1) Takahashi Y, et al:J Neuroimmunol. 2016;298: 71-8.

【解説】

荒田 仁 鹿児島大学神経内科

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