そのため,高温環境下での運動のように発汗が顕著に多い状態を除き,ちょっと汗をかくというような場合であれば,夏場でも塩分摂取制限を継続したままで十分と考えられます。ただし,水分と塩分は厳密に切り離して考える必要があり,枯渇を予防するために水分はしっかり補給すべきです。日本高血圧学会のHPにも,夏の日常生活における水分と塩分の摂取について,上記のような提言がなされています1)。
一方,降圧薬としてサイアザイド系利尿薬などのNa利尿薬を使用している場合は,腎におけるNa再吸収を人為的に抑制することで血圧を下げています。したがって,このような薬剤服用中には,大量発汗などの急激なNa枯渇時においてもNa再吸収の代償的な抑制ができません。そのため夏場で発汗増加が予想される場合には,このような薬剤の過剰な投与は事前に避けておいたほうが安全と考えられます。
【文献】
1) 日本高血圧学会:夏の日常生活における水分と塩分の摂取について:熱中症予防と高血圧管理の観点から.
[https://www.jpnsh.jp/data/salt_cnts003.pdf]
【回答者】
鶴岡秀一 日本医科大学腎臓内科教授