2007年にKajiらは,新規筋炎特異的自己抗体として抗155/140抗体を報告した1)。その後,抗155 /140抗体の対応抗原がtranscriptional intermediary factor 1(TIF1)であることが明らかになった。TIF1にはα(140kDa),β(100kDa),γ(155kDa)の3つのサブユニットが存在する2)。このうち,主要な抗原であるTIF1γを抗原としたELISA検査試薬が開発され3),2016年10月に保険適用となった。抗TIF1抗体はHEp-2細胞を基質とした蛍光抗体間接法で,低力価のspeckled型を示す。
抗TIF1抗体は皮膚筋炎の約25%で陽性となる。抗TIF1抗体は,成人では高率に悪性腫瘍を合併するが,間質性肺炎の合併は少ない。抗TIF1抗体は小児皮膚筋炎とも関連し,小児皮膚筋炎で最も高頻度に検出される筋炎特異的自己抗体である。成人とは異なり,小児では悪性腫瘍を合併しない。
ヘリオトロープ疹やGottron丘疹以外に,体幹の紅斑(scratch dermatitisやV-neckサイン)や爪囲紅斑,爪上皮出血点など,多彩な皮疹を有する。皮疹のみで筋症状がみられないamyopathic dermatomyositisのことがある。抗TIF1抗体では悪性腫瘍の検索が重要であるが,皮膚症状が悪性腫瘍に先行することがあるため,診断時に悪性腫瘍がみられなくても,少なくとも3年間は悪性腫瘍の発生に注意する。
【文献】
1) Kaji K, et al:Rheumatology(Oxford). 2007;46 (1):25-8.
2) Fujimoto M, et al:Arthritis Rheum. 2012;64(2): 513-22.
3) Fujimoto M, et al:J Dermatol Sci. 2016;84(3): 272-81.
【解説】
濱口儒人 金沢大学皮膚科准教授