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(2)骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に対する 椎体形成術vesselplasty法 [特集:加齢による脊椎疾患治療の進歩と課題]

No.4750 (2015年05月09日発行) P.21

伊藤不二夫 (伊藤整形・内科あいち腰痛オペクリニック理事長兼院長)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-20

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  • 骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折の治療目標は早期疼痛緩和・離床によるQOLの早期獲得である

    vesselplasty法は局所麻酔下,monoportal extrapedicle approach(片側椎弓根外刺入)による簡便な椎体形成術である

    椎体内に刺入したTeflon bag中に骨セメントを注入して椎体高を増幅し,漏出も予防する

    骨セメントは生体適合性を有し,適度な硬度,低い重合熱でなければならない

    vesselplasty施行後の9.2%に続発新鮮隣接椎体圧迫骨折が発生し,これは一般的な骨粗鬆症性圧迫骨折での続発例自然発生率と同程度であるが,いずれも長期にわたり包括的治療が重要である

    1. 簡便な椎体形成術vesselplasty法の特徴と構成

    1 メッシュTeflon bagの重要性

    vessel(container,器)とは,ノズルの先端に取り付けられたpolyethylene terephthalate(PET)の非伸縮性100μmメッシュTeflon bagを指す(A-SPINE社,台湾)。シリンジから2.5cc Teflon bag分の新骨セメントOsteo-G Plus(海外品)が注入され,椎体高を高める。さらに加圧すると,Osteo-G PlusがTeflon bagのmicroporeより滲み出て抵抗の弱い骨梁欠損部を充塡し,海綿骨と絡み合う(図1)。また,Teflon bagの存在は骨セメント漏出を少なくする機能も有する。

    2 骨セメントの物理特性

    Osteo-G Plusは,polymethyl methacrylate(PMMA)30%,CaSO4・1/2H2O(半水石膏)45%,BaSO4 20%,strontium-containing hydroxyapatite(Sr-HA)5%からなる。アクリル樹脂PMMAは,生体適合性がなく,単独重合熱120℃は周囲細胞を壊死させ,clear zoneが発生しlooseningが生じやすい。Osteo-G Plusは,低濃度の30%PMMAで重合熱65℃以下となり,clear zoneができにくい。また,椎体硬度に近似の70mPaで隣接椎体圧潰への影響が少ない(PMMA単独では100mPa)1)

    3 骨誘導性素材の含有

    hydroxyapatite(HA)の主成分は多孔性リン酸カルシウムであり,骨細胞との融合性に富み,生体適合性,骨誘導性に富む。さらにstrontium(Sr)を加えると,HAの生物活性力はより活性化される。天然Srは人骨,歯,サンゴに含まれ,原子量88の骨成長元素であり,骨芽細胞生着や骨セメント間との骨形成を促進する2)3)。Srイオンは結晶化格子エネルギーが低く,放出されたスペースに直径が小さく結晶化率の高いCaイオンが入り込み,骨細胞結晶化が促進される4)5)。またOsteo-G Plus中のCaSO4・1/2H2Oは,椎体内血液と反応して二水石膏となり,膨張・硬化し椎体硬度を補強する。

    4 簡便で,より安全な手術キット

    手術キットは簡便で,シリンジ内のOsteo-G Plus粉末にmethyl-methacrylate液を混合し,モーター交互回転でペースト状に撹拌する。閉鎖性キットであり,ガス漏れがなく,デリバリーキットを介し注入量が正確(1回転0.25cc)にTeflon bag内に流し込まれる。PMMAのfree monomerは局所炎症を起こす細胞毒を有しており6),またPMMA重合時に放出される一酸化炭素は循環器毒となるため,低濃度かつ密閉システムであることが重要である。

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