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米国の終身介護退職者コミュニティ(CCRC)における終末期医療(8)[エッセイ]

No.4861 (2017年06月24日発行) P.68

宮本礼子 (江別すずらん病院 認知症疾患医療センター長)

森永知美 (MRG Associates, Inc. 代表)

宮本顕二 (北海道中央労災病院院長)

登録日: 2017-06-25

最終更新日: 2017-06-20

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  • CCRCのまとめを2回にわけて掲載します。

    CCRCが生まれた背景

    まず、“自立の尊重”という国民性が背景にあります。米国は高齢者でも自立が尊重される国です。そのため、子どもとは同居せず、90歳代の歩行がおぼつかない高齢者でも車の運転をします。公共の交通機関が不便なため、自由に暮らすには自分で車を運転しなければならないからです。CCRCに入居することで、家族に負担をかけずに、精神的にも自立して生きていけます。

    次に、“退職後も積極的に人生を楽しむ”という国民性が挙げられます。一昔前は、勤労者の夢は退職者コミュニティの先駆けとして有名なアリゾナ州の「サンシティー」で暮らすことでした。わが国では退職した後に、「さあこれから遊ぶぞ!」と積極的に人生を楽しもうとする人は、そう多くないと思います。高齢者だけのレジャー施設もありません。高齢者はどちらかというとひっそりと暮らしています。

    “財産の使い方の違い”も背景にあります。CCRCに入居するには高額の費用が必要なため、しばしば自宅や株を売却して入居費用に充てます。家や財産は子どもに残さず、自分たちの老後のために使うところが日本と違います。

    当然ながら“生活環境(治安の悪さ)”も背景にあります。米国は治安の悪い所が多いのですが、CCRCは治安がよく、子どもや若者がいないので静かです。入居者は同年齢のため考え方も似ており、暮らしやすいところです。

    “住居の住み替えに抵抗がない人が多い”ことも背景にあります。米国では日本のように子どもが家を受け継ぐという習慣はありません。子どもが学校を卒業して親元から離れて生活を始めると、大きな家は維持する手間や費用がかかるため、夫婦で小さな家に住み替えていきます。

    このような背景から、米国にCCRCが生まれ、拡がってきました(写真)。


    CCRCではなぜ看取りができるのか?

    日本では高齢者の約2割しか施設や在宅で看取られていません。一方、リージェント・ポイント(No.4842、連載4/No.4846、連載5参照)では、入居者の98%が看取られています。その33%がインディペンデント・リビング(写真)で、66%がナーシング・ホームです。CCRCではありませんが、ダナポイント・イージスリビング(連載5参照)でも全員が施設で亡くなっていました。

    全米のアシスティド・リビング入居者の死亡場所は、33%がアシスティド・リビングで、60%が移動先のナーシング・ホームです。このように、米国の介護施設入居者のほとんどは病院ではなく施設で亡くなります。日本のように、食べられなくなると、点滴や経管栄養を受けることもないので、短期間のうちに亡くなります。ちなみに、全米のナーシング・ホームの平均入所日数はとても短く29日です。

    米国の介護施設で看取りができるのは、病院が短期間で患者を施設にもどすこと、施設でホスピスサービスが利用できること、POLST(No.4836、連載2参照)の普及により、ほとんどの高齢者と家族が終末期には積極的医療や延命医療を望まないこと、などのためです。事実、米国全土のPOLST作成率は23%と低いのですが、見学した2つのCCRCとダナポイント・イージスリビングは95%以上でした。

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