がん患者は年々増加し,年間100万人ががんと診断される時代に突入した。一方で、診療技術の進歩により診断後の5年相対生存率は改善しており,転移がある患者が長期に生存可能となった1)。2006年のがん対策基本法成立により,がん患者の療養生活の質の維持向上が目標とされたことから,以前と比較し骨転移診療の重要性も見直されている。
骨転移診療の目標は,骨折や麻痺の予防および治療,疼痛コントロールにより,ADLやQOLを維持することである。整形外科は,適切に骨折や麻痺出現のリスクを評価し,放射線科とともに,手術や放射線治療の適応を決定する。リハビリテーションでは,安全かつ疼痛が少ない方法で運動療法を進め,予後を考えながら到達可能なADLを予測し,自宅退院可能な場合には早急に環境整備を行う。さらに,16年のがん対策基本法改正法により,がん患者の雇用継続が推進されると予想され,骨転移患者においてもより積極的な就労支援が必要になる。
このような時代の流れに対応するために,大学病院やがんセンターなどでは多職種・多診療科による骨転移診療体制が少しずつ整備され,上記診療科のほか,緩和ケアチーム,地域医療連携部などと協力して,患者のADLやQOLを維持・改善する取り組みが進められている。各病院による体制の違いはあっても,今後このような骨転移診療体制の整備がますます進むことが予想される。
【文献】
1) 国立がん研究センター:がん情報サービス. [http://ganjoho.jp/public/index.html]
【解説】
篠田裕介*1,芳賀信彦*2 *1東京大学リハビリテーション医学講師 *2同教授