耳管開放症は,欠伸や嚥下時に短時間のみ開く耳管が,それらにかかわらず通常よりも長時間にわたり開放することで,自声強聴,耳閉感,自己呼吸音の聴取などの不快な症状を自覚する。原因は体重減少,妊娠,透析などで,有病率は全人口の3~5%程度と考えられている。鼓膜の呼吸性動揺,臥位や前屈位による症状改善が特徴的所見とされ,耳管機能検査機器も用いて診断を行う1)。
本症の亜型として,鼻すすり癖を持つ「鼻すすり型耳管開放症」があり,1/4程度の割合とされる。この鼻すすり型耳管開放症は耳管構造の脆弱性が示唆され,鼻すすり癖のないものと比較してより若年で発症し,鼻咽腔から鼓室へと向かう圧変化がより大きく影響し,症状の原因になっている2)。
耳管開放症の治療は,生活指導(急激なダイエットの禁止,脱水予防,鼻すすりの禁止など),ATP製剤,漢方製剤,生理食塩液点鼻,鼓膜テープ貼付などの保存的治療がまず行われる。これらで効果のないものは,軟骨による鼓膜形成や耳管鼓室口への小林式耳管ピンの挿入など,外科的治療を要することがある。筆者らは,難治性の鼻すすり型耳管開放症に対し,圧変化を抑える鼓膜換気チューブ留置が特に有効であることを報告した2)。鼓膜換気チューブ留置は鼻すすりによって起こる鼓膜の陥凹性病変を予防する作用も持つ。
【文献】
1) 日本耳科学会:耳管開放症診断基準案 2016. [http://www.otology.gr.jp/guideline/img/guide line_jikan2016.pdf]
2) Endo S, et al:Acta Otolaryngol. 2016;136(6): 551-5.
【解説】
遠藤志織*1,細川誠二*2 *1浜松医科大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科 *2同准教授