膵管内乳頭粘液性腫瘍(intraductal papillary mucinous neoplasm:IPMN)は,膵管上皮から発生し,腫瘍細胞の粘液産生による膵管拡張や嚢胞性変化を特徴とする疾患である。治療方針について2006年に初の国際診療ガイドライン1)が発表された。このガイドラインを基礎に新たな知見を加えた結果,12年に国際診療ガイドライン2)が新たに改訂された。
特に,分枝膵管型IPMNの多くは経過観察可能な低悪性度腫瘍であり,新たな治療アルゴリズムが提唱された。06年のガイドラインでは嚢胞径に重点が置かれた治療指針であったが,12年の新ガイドラインでは壁在結節や主膵管拡張が重視された。“high-risk stigmata”(確診所見),“worrisome features”(疑診所見)が定義され,手術適応,経過観察の方法が細分化された。IPMNの通常型膵癌の合併が一般人口に比べ高率であることがわかってきており,経過観察中の通常型膵癌合併に十分な配慮が必要とされている。その一方で,IPMNの自然史や切除後の経過観察などについては,いまだに解明されていない点も多い。さらなるエビデンスが蓄積された上での今後の改訂が期待される。
【文献】
1) Tanaka M, et al:Pancreatology. 2006;6(1-2):17-32.
2) Tanaka M, et al:Pancreatology. 2012;12(3): 183-97.
【解説】
小暮正晴 杏林大学消化器・一般外科