耐性菌アウトブレイクが発生すれば、死亡を含む重篤な事態を招きかねない。医療機関は院内感染制御チームを設置して事態に備えるが、講じるべき安全対策の範囲や他施設の状況が見えず困ることがある。こうした問題の解決を試みる情報共有ネットワーク「青森県感染対策協議会」(AICON)の取り組みを紹介する。
弘前大病院は2014年、青森県の基幹病院や行政と連携し、感染対策に特化した情報共有ネットワーク「AICON」(図1)を立ち上げた。AICONには現在、県内の基幹病院とその連携病院を中心に約30施設が参加。細菌検査情報システム「MINA」を稼働させ、分離された菌種、分離頻度、薬剤感受性などの情報を弘前大に置かれた事務局で分析・収集している。各施設へのフィードバックは6カ月に1度。各施設でアウトブレイクを疑わせる事例の発生や、その対応の適否を含めた察知が可能だ。さらに、参加施設はインターネットを通じて自由に分析し、自施設独自のアンチバイオグラム(薬剤感受性表)を作ることもできる。AICON創設を牽引した弘前大病院感染制御センター長の萱場広之氏は、「アウトブレイクは完全には防ぎきれない。重要なのはきちんと対応できるかです」と話す。
アウトブレイクの対応でAICONが特別に動いたという事例は今のところないが、施設内でどうしても抑えきれない場合には、病棟や病院の閉鎖という重大な決定が必要となる前に、AICONを通して第三者的な視点を入れた対応の検討が可能だ。
「アウトブレイクなどの発生時に問題を抱え込まずに済むような、オープンな受け入れ体制があることが、病院にとっての安心につながります。アウトブレイクを表沙汰にできないという風潮はなくなりつつある。情報公開は恥ずかしいことではありません。患者さんのためにベストを尽くしている姿を見せていくことが大事だと思います」
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