細径の内視鏡を用いた嚥下内視鏡検査は,患者への負担も少なく,嚥下機能評価においては必須の検査と位置づけられる
嚥下内視鏡検査では嚥下器官の運動および感覚機能,ならびに器質的病変の有無の評価が必要であり,客観的評価には「スコア評価法」が有用である
喉頭挙上や食道入口部の開大性,食道期の評価には限界があり,必要に応じて嚥下造影検査も考慮すべきである
高齢化社会を迎えた今日,嚥下障害患者は急速に増加しており,医療的にも社会的にも大きな問題となっている。嚥下障害は脳血管障害,神経・筋疾患,口腔・咽頭・喉頭・食道などの嚥下器官の器質的疾患や手術,加齢など様々な原因により生じる。このため,嚥下障害の病態,すなわち障害様式と重症度はきわめて多岐にわたる。これらの患者に対して適切な治療や対応を行う上では,その病態の適切な評価が必要である1)。
嚥下機能検査には,嚥下造影検査,嚥下内視鏡検査,嚥下圧検査,筋電図検査などがある。このうち嚥下造影検査は口腔期,咽頭期,食道期のすべての期の嚥下運動を視覚的に評価できることから,嚥下機能検査法としては最も重要度が高い。しかし,本検査はベッドサイドや外来診察室では行えず,さらに被ばくの問題があるため,“いつでも,どこでも,何度でも”行える検査ではない。嚥下圧検査や筋電図検査も嚥下運動の動態を把握する上では有用な検査ではあるが,検査手技がやや煩雑で検査機器も一般に広く普及しているとは言えず,ルーチンに行う検査とは言いがたい。
嚥下内視鏡検査は,嚥下関連器官である咽頭および喉頭の形態や機能を,軟性内視鏡で観察することにより嚥下機能を評価する方法であり,1988年にLangmoreら2)によってFEES(fiberoptic endoscopic evaluation of swallowing)として提唱された。1991年にはBastian3) が内視鏡所見を録画するビデオ内視鏡検査(videoendoscopic evaluation of dysphagia:VE検査)として報告し,その後,嚥下造影検査と比較しても特異度や感度に遜色ないことが相次いで報告されるようになった4)~6)。現在では光学機器の発達に伴い,当時と比較して格段に鮮明な検査画像が得られ,有用性はさらに高くなっている。
嚥下内視鏡検査はベッドサイドでも実施することができ,検査に伴う侵襲も少ない。『嚥下障害診療ガイドライン2012版』においても,本検査は一般外来で実施すべき必須の嚥下機能検査と位置づけられている7)。
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