妊娠中の感染症のうち,母体には重篤な症状をきたさないが胎児や新生児に垂直感染して,発育不全,水頭症,小頭症,脳内石灰化,心奇形,白内障,網膜炎,難聴,皮疹,肝脾腫,血小板減少,精神発達遅滞などの重篤な症状や障害をきたす母子感染がある。これらを,トキソプラズマ(toxoplasma gondii),Others(梅毒,パルボウイルスB19など),風疹ウイルス(rubella virus),サイトメガロウイルス(cytomegalovirus),単純ヘルペス(herpes simplex virus)の病原体や疾患の頭文字を取って「TORCH症候群」と呼ぶ。2013年には風疹が,2011年と2015年には伝染性紅斑が流行し,梅毒患者も増加した。厚生労働科学研究と日本小児感染症学会による最近の調査によって,わが国の母子感染,特にTORCH症候群の実態が明らかとなり,新たな問題点が浮き彫りとなった。
1 TORCH症候群の現状と問題点
神戸大学大学院医学研究科外科系講座産科婦人科学分野教授 山田秀人
神戸大学大学院医学研究科外科系講座産科婦人科学分野准教授 蝦名康彦
2 先天性サイトメガロウイルス感染症の予防,診断と治療
神戸大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター講師 谷村憲司
神戸大学大学院医学研究科地域医療ネットワーク学分野特命教授 出口雅士
3 先天性トキソプラズマ症の予防,診断と治療
神戸大学大学院医学研究科地域医療ネットワーク学分野特命教授 出口雅士
神戸大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター講師 谷村憲司