かつて「新生児は痛みを感じない」と信じられていた時代もあったが,近年,早産児ほど痛みを感じやすく,また,繰り返す痛み経験が長期的な発達に悪影響を及ぼすことがわかってきた。欧米では早くから新生児の痛みに対する取り組みがなされ,2000年代に入り各学会からガイドラインが発表されるようになった1)。
わが国においても14年12月,「NICUに入院している新生児の痛みのケアガイドライン(実用版)」が発行された2)。本ガイドラインでは,採血等の処置時に行う具体的な痛みの緩和法が,エビデンスの強さとわが国の実情を勘案して「推奨」あるいは「提案」されている。「推奨」としては,包み込み(ブランケットで包み込み,四肢が過度に動くことを防ぐ)やホールディング(両手で胎児姿勢のように包み込む)などが,「提案」としては,処置前に可能な限り安静時間をとる,足底穿刺時の全自動型ランセットの使用,おしゃぶりの使用,早産児の足底穿刺前のショ糖口腔内投与,などが挙げられている。
本ガイドラインの対象はNICUなどに入院している新生児ではあるが,新生児のケアに関わるすべての医療者が新生児の痛みに関心を持ち,協働して痛みのケアを実践していくことが望まれる。
【文献】
1) 山田恭聖:日小児会誌. 2016;120(4):707-20.
2) 「新生児の痛みの軽減を目指したケア」ガイドライン作成委員会:NICUに入院している新生児の痛みのケアガイドライン(実用版). 2014.
[http://www.jspnm.com/topics/data/kaiin 20150128.pdf]
【解説】
安達裕行 秋田大学小児科