現行のスプリットワクチンの有効性は成人・高齢者で60%前後,小児では抗原性が一致した年で78%,一致しない年で55%と報告されている
最近,A型ウイルスではH1,H3が,B型ウイルスではVictoria系統,Yamagata系統の4種類のウイルスが混在流行しており,2015/16シーズンから4価ワクチンとなる
現行のスプリットワクチンはTh2応答に偏った免疫応答を誘導し,IgE感作を増強するためアナフィラキシーの原因となっている。有効なワクチンはTh1/Th2のバランスのとれた免疫応答を誘導する必要がある
皮内接種ワクチン,噴霧生ワクチンの臨床試験が終了し,数年後には全粒子不活化経鼻接種ワクチンの臨床試験も準備されており,ワクチンの選択肢が増える
インフルエンザは毎年流行を繰り返し,流行年度には高齢者を中心に超過死亡が増加することから,一部個人負担で高齢者へのインフルエンザワクチンが勧奨接種ワクチンとして推奨されてきた。高齢者の肺炎だけでなく,乳幼児のインフルエンザ脳症の合併などからインフルエンザワクチンの重要性への認識が高まってきた1)。
開発当初の全粒子不活化ワクチンは,原材料の鶏卵の汚染やウイルス膜に宿主由来の脂質膜成分を含んでいたことから,副反応として発熱率が高かった。わが国では1972年に,現在のスプリットワクチンの原型となるウイルス粒子を界面活性剤で分解し,エーテルで発熱原因となる脂質膜成分を除去する方法によって,安全性の高いスプリットワクチンの製造が始まった2)。
現行の季節性インフルエンザワクチンの有効性に関しては開発当初から議論がある。Osterholmら3)が1967~2011年の間に発表されたワクチンの有効性に言及した5707論文を検討した結果,18~65歳を対象に遺伝子検出を指標としたワクチンの有効率は59%,6~24カ月を対象とした2論文ではまったく異なる結果であること,8~17歳では17論文中6件が有効であると結論している。
小児期の季節性インフルエンザワクチンの有効性に関する30論文の8万8468例の解析では有効率が,すべての株に対しては65%,ワクチン株と流行株との抗原性が一致した年で78%,一致しない年でも55%と報告されている4)。スプリットワクチンはインフルエンザウイルス感染の既往があるワクチン被接種者において抗体を誘導し,その免疫応答は年齢因子(過去のインフルエンザの既往)に強く影響される。現行のスプリットワクチンの限界とその対応について図1に示した。
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