わが国のこどもホスピスを含む小児緩和ケアのレベルは,WHOの最近の報告書では,4段階の下から2番目の“building”にとどまっている。小児緩和の分野を向上させていくにあたって,3つの軸の必要性を感じている。
1つ目は,医療的・科学的な進歩である。たとえば,コンパクトな在宅人工呼吸器の開発により,今までは家庭に帰ることは不可能だった重症患者が,自宅でも生活できるようになった。医療的・科学的な進歩をめざすことは,我々医療者の本分である。2つ目は,全人的ケア,spiritual careの向上である。たとえ,子どもとの時間が限られていても,家族や仲間は子どもを抱きしめたり,遊んだり,お出かけをしたり,大好きなアイスクリームを一緒になめたり,お風呂に入ったり,たくさんの輝くような時間を持てるように集中すべきである。その凝縮した時間を送れるように,特に精神的なサポートも含めた全人的ケアのレベルも進歩させる必要がある。3つ目は,社会とのつながりである。筆者らのこどもホスピスでは,昼間のレクリエーション活動などは多くのボランティアによって支えられている。また,様々な方が無償で音楽や絵画などの芸術を届けてくれ,子どもたちの笑顔を支えてくれる。
海外では,地域社会が難病の子どものことを本当に大切に思い,チャリティー活動などを展開して,こどもホスピスに対する経済的なサポートも行っている。我々も,地域行政や医師会の支援もあるが,今後地域とのつながりをさらに広げていく必要がある。
【解説】
鍋谷まこと 淀川キリスト教病院小児科部長/副院長