日本放射線腫瘍学会は20日にセミナーを開き、次期診療報酬改定に向け、粒子線治療(用語解説)の保険適用拡大を厚生労働省に要望していることを発表した。
同学会粒子線治療委員会の櫻井英幸委員長によると、粒子線治療のうち現在保険収載されているのは、20歳未満の小児腫瘍に対する陽子線治療と切除非適応の骨軟部腫瘍に対する重粒子線治療のみ。櫻井氏は、「(日本は)研究開発は進んでいる一方で、国民への提供は先進諸国の中でも遅れている」と指摘し、次期改定に向け、①骨軟部腫瘍、②頭頸部癌(非扁平上皮癌)、③肝癌―の3疾患に対する粒子線治療の保険適用を、厚労省に要望していることを明らかにした。
保険適用が遅れている理由について櫻井氏は、「国民皆保険は非常に良い制度だが、高額医療を万人に提供することはなかなか馴染まない」として、粒子線治療のコストを課題に挙げた。これに対し茂松直之理事長は、「(既に保険収載されている」従来の治療より明らかに優れているというエビデンスを出せないと、保険は認められない」との見方を示した。
櫻井氏はこのほか、同学会と小児血液がん学会が小児・AYA世代の腫瘍に対する陽子線治療のガイドラインを作成していることを発表。線量分布・費用対効果からみた治療の推奨の可否や、比較的よくある疾患の脳腫瘍、横紋筋腫、神経芽腫に対する治療のエビデンスを明示するという。ガイドラインは来春にも公表する予定。