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多発性硬化症(MS)再発予防薬と進行性多巣性白質脳症(PML)【ベースライン治療薬以外を使用する際には,PMLのリスクを考慮しなければならない】

No.4879 (2017年10月28日発行) P.51

宮本勝一 (近畿大学神経内科准教授)

登録日: 2017-10-30

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多発性硬化症(MS)の再発予防薬(DMD)は,2種類のインターフェロンβ製剤(IFNβ)に加えて,グラチラマー(GA),フィンゴリモド,ナタリズマブ,フマル酸ジメチルと6種類が承認され,患者に応じた使いわけが可能になってきた。ベースライン治療薬であるIFNβとGAは重大な副作用はないが,自己注射が必要である。疾患活動性の高い患者に用いられるナタリズマブは強力な再発予防効果を有し,月1回の点滴でよいが,進行性多巣性白質脳症(PML)という重篤な有害事象が報告されている。このため,投薬期間,抗JCウイルス抗体価,免疫抑制薬使用歴などからリスクを割り出し,注意深く観察することが求められている。

フィンゴリモドは,有効性が高く経口薬であるため処方数が激増したが,易感染性とともにPMLも報告されるようになり,処方には十分な注意が必要であると認識されるようになった。フマル酸ジメチルは最も新しい経口薬のDMDであり,有効性はベースライン治療薬より高く,安全性も比較的高いと期待されているが,PMLが報告された。

よって,ベースライン治療薬以外を使用する際にはPMLのリスクを考慮せねばならない。薬剤ごとに発症因子が検討されているが,無症候であれば予後が良いため,早期発見が重要である。現時点ではMRI(FLAIR画像)が最も有用であることから,3カ月ごとに撮影することが推奨されている。

【参考】

▶ プリオン病及び遅発性ウイルス感染症に関する調査研究班:進行性多巣性白質脳症(PML)診療ガイドライン2017. [http://prion.umin.jp/guideline/guideline_PML_2017.pdf]

【解説】

宮本勝一 近畿大学神経内科准教授

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