今回,日本呼吸器学会から「成人肺炎診療ガイドライン 2017」が出版されました。わが国においては高齢化社会が進んでおり,実際の臨床の場において高齢者の肺炎がとても重要となってきています。
高齢者肺炎の対応が問題となっている中,大分大学・門田淳一先生は,特に誤嚥性肺炎の重要性を指摘されています。ぜひ,高齢者肺炎における誤嚥の位置づけや対応などを教えて頂ければと思います。
【質問者】
迎 寛 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科展開医療科学講座呼吸器内科学分野(第二内科)教授
超高齢社会を迎えたわが国の死因の第3位は肺炎ですが,その約97%は65歳以上の高齢者です。また,わが国の肺炎の疫学調査では,65歳以上になると肺炎の罹患率が急速に上昇し,誤嚥性肺炎の多くは,65歳以上の高齢者であるとされています1)。
高齢者は,いったん肺炎に罹患すると日常生活活動が低下し,嚥下機能も低下して誤嚥性肺炎を繰り返しやすくなります。さらに肺炎で入院すると認知症の発症リスクが2倍に上昇するとされており2),栄養摂取経路が経口から経管栄養などに変化することで肺炎の再発リスクや肺炎による死亡リスクが上昇します3)。特に超高齢者においては,誤嚥性肺炎自体が予後不良因子であり,耐性菌に対する適正な抗菌薬治療が必ずしも予後を改善するとは限らないことが報告され4),誤嚥性肺炎は,非誤嚥性肺炎に比して入院時死亡や30日死亡のリスクが高いことがメタ解析の結果で明らかとなっています5)。
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