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橈骨遠位端骨折の術後合併症:長母指屈筋腱断裂【掌側ロッキングプレートと腱が接触し,摩耗することで生じる腱断裂】

No.4886 (2017年12月16日発行) P.59

多田 薫 (金沢大学整形外科)

土屋弘行 (金沢大学整形外科教授)

登録日: 2017-12-19

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転倒し地面に手をつくなどして受傷する橈骨遠位端骨折は骨粗鬆症に伴う三大骨折のひとつであり,頻度の高い骨折である。一般的に,ずれのない骨折に対してはギプス固定による保存療法が,大きくずれた骨折に対しては「掌側ロッキングプレート」という金属製のインプラントによる手術療法が選択されている。プレートによる治療成績は概して良好であるが,稀に合併症として母指を屈曲させる「長母指屈筋腱」の断裂を生じる点に注意が必要である。腱断裂はプレートと腱が接触し,摩耗することで生じる。

筆者らは,母指を動かした際に違和感や痛みがある状態,または手関節部の皮下に「きしみ」を触れる状態を「腱刺激症状」と定義し,腱断裂に至る徴候として評価してきた。その結果,腱刺激症状のある例は腱の損傷が生じている可能性の高いことがわかった。そこで,術後は腱刺激症状の有無について評価するとともに,患者にも自己評価を行ってもらい,異常があった場合はプレートの抜去を勧めている。腱断裂は身長150cm未満の小柄な中高年女性に発生しやすい傾向があるため,特に注意が必要である。

近年は腱断裂を予防するために手術術式の見直しやプレートの改良が進んでおり,腱断裂の発生頻度は減少しているが,現在も腱断裂は発生している。もしプレートが入ったまま母指の違和感を自覚している患者を見かけた場合は,一度整形外科を受診するようにお声掛け頂きたい。

【解説】

多田 薫*1,土屋弘行*2 *1金沢大学整形外科 *2同教授

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