敗血症性ショックの認識早期に,循環・酸素代謝蘇生を行うことは重要である
国内外の敗血症診療ガイドラインでは,早期目標指向型治療のアルゴリズムに基づく蘇生バンドルが提唱されてきた
平均動脈圧と乳酸値を主な治療目標とする
リンゲル液などの等張晶質液を初期1時間で30mL/kgをめどに急速投与する
循環作動薬としては,ノルアドレナリンなどの血管収縮薬を使用する
輸液製剤の種類と量,中心静脈圧や中心静脈血酸素飽和度,アルゴリズムの有用性などの議論が続いている
敗血症(sepsis)は,感染を原因として急性臓器不全やショックが惹起された病態を指し,集中治療室における最頻の死亡原因である。敗血症の中で急性臓器不全を伴うものを重症敗血症(severe sepsis),ショックを伴うものを敗血症性ショック(septic shock)と呼ぶ(ただし,この重症敗血症という呼称は今後撤廃され,“敗血症”に統一される可能性がある)。
2001年の米国での大規模疫学調査では,敗血症患者は年間75万人発生し,死亡率は29%にも及んだ1)。高齢化,過大侵襲や人為的免疫抑制を伴う新しい治療介入により,その発生率は年間1.5%ずつ増加し,総人口増加率を凌駕する患者数発生が見込まれる1)。したがって,敗血症に対する治療戦略の確立は,救急・集中治療あるいは感染症診療に携わる医療従事者にとって最重要課題である。
2002年,欧州と北米の研究者らによる合同カンファレンスにおいて,敗血症の死亡率を5年間で25%低下させることを目標に,エビデンスに基づいた敗血症の国際的診療ガイドライン(Surviving Sepsis Campaign Guidelines:SSCG)が作成された。本ガイドラインは2008年に改訂,2012年に再改訂されるとともに2),日本集中治療医学会からは「日本版敗血症診療ガイドライン」(The Japanese Guidelines for the Management of Sepsis)も公表された3)。これらは,敗血症,中でも重症敗血症/敗血症性ショックに対する標準的治療を提案・推奨することにより,予後改善をめざしている。とりわけ,認識早期の迅速な対応を,バンドル(bundle,束)として適応することを勧めている。
有効とされる介入を限られた時間の中で,バンドル(束)として適応するのがバンドルアプローチである。2008年の重症敗血症のバンドルには,①初期の6時間以内における循環・酸素代謝蘇生を指向した蘇生バンドル,②ICUにおける補助療法に関する管理バンドル,があった。蘇生バンドルには,初期の6時間以内における循環・酸素代謝蘇生を指向した早期目標指向型治療(early goal-directed therapy:EGDT)と,感染症の診断と抗菌療法が含まれた。2012年のSSCG改訂版では,管理バンドルが削除され,時間により2種類の蘇生バンドルが提唱された(表1)3)。
残り6,058文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する