インフルエンザは呼吸器疾患以外の合併症も起こしうる。特に心臓合併症は致死率が高い
心筋炎は急性期を乗り切れば後遺症もなく正常な心機能に回復することも多く,速やかな診断と治療の開始が望まれる
インフルエンザ罹患後に冠動脈疾患を発症することも多く,ハイリスク群では流行期に入る前の予防接種を考慮する
筋炎は上気道症状が消失する時期に発症することが多く,注意する
インフルエンザは呼吸器疾患以外にも,頻度は高くはないものの心筋炎や脳炎などの様々な合併症を引き起こすことが知られている。米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention:CDC)が挙げている合併症のハイリスク群を表1に示す1)。特にウイルス性心筋炎をはじめとする心臓の合併症は,時に致死的な転帰をとることもあり,見逃してはならない病態である。本稿では心筋炎を中心に,冠動脈疾患との関連など,インフルエンザによる心臓合併症一般について概説する。心臓以外の筋肉合併症についても,併せて述べる。
ウイルス性心筋炎は,インフルエンザ全体の0~10%(報告の時期,診断基準などにより異なる)で合併するとされ,不顕性のもの(心電図変化や心筋逸脱酵素の上昇のみ)から致死的不整脈,突然死をきたしうる劇症型心筋炎に至るまで,様々なプレゼンテーションを示す2)3)。特に重症例では合併率が高いものと考えられ,小児のインフルエンザ死亡47例のうち6例の死因が心筋炎だったとする研究もある4)。
典型的にはインフルエンザによる上気道症状を発症した4~9日後に,増悪する呼吸苦で発症するとされる2)。胸痛,動悸,咳嗽などをきたすことも多い。胸部症状で受診する際,上気道症状の発症と時期がずれるため,患者本人は上気道症状と胸部症状を関連づけてとらえていないことも多い。インフルエンザの診断が事前についていない場合も多いため,流行期には上気道症状の有無などにつき,積極的に問診をとるのが望ましい。
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