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痛みとタバコ[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.91

飯田宏樹 (岐阜大学大学院医学系研究科麻酔・疼痛制御学分野教授・日本ペインクリニック学会第51回大会会長)

登録日: 2018-01-06

最終更新日: 2017-12-22

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がんの痛みとタバコについて、2017年7月の日本ペインクリニック学会第51回大会で初めて取り上げた。現在、がん治療の成績は向上して、5年生存率・10年生存率が飛躍的に上昇し、がんサバイバーが増えている。厚生労働省も「がんと診断されたときからの緩和ケア」という、がん早期からの介入を勧めている。かつての一般的な「がんの痛み」=「終末期医療」という図式は、もはや成り立たなくなっている。

急性期病院においては、がん治療期の患者の、治療に伴う「遷延性術後痛(術後の痛みが慢性化して3カ月以上持続する)」「化学療法や放射線治療に伴う痛み」ががんの疼痛治療の重要な部分を占めている。これらの痛みに関して、がんと診断後、治療が開始されてからの喫煙は、治療成績を悪くして生命予後を悪くすることはもちろん、痛みを悪化させADLを障害することが知られている。がんになったからもう禁煙の必要がないのではなく、がんになった今だからこそ禁煙が必要ということになる。本来のがん疼痛(がんそのものによる痛み)も同様に悪化させるので、ADLの維持から考えて、禁煙は必須のものとなる。

最近のがん治療の進歩に伴う治療の現場を見ていると、安易に「もうタバコを吸っても良いよ」というのは、患者にとってつらい宣告である可能性がある。もちろん、終末期には患者個人ごとに応じた対応が必要なことは当然ではあるが。

このような話を、今後まじめに議論できる環境が必要であると考えている。今回の学会がそのきっかけになったらうれしいと考え企画した。嗜好品であるからと、考えは人様々であることも承知している。ただ、患者に話してみると、そんな喫煙の悪影響のことは知らなかった、という反応が多い。もっと早く知らせてくれたらよかったのに、という言葉を聞くたびに、少なくとも情報提供だけはしてあげてほしいと願っている。

2年後に慢性疼痛に関する学会を主宰することが決まっている。次は、運動器疼痛とタバコに目を向けて、質の高い「健康寿命」を伸ばすために、禁煙を議論の対象にしたいと考えている。

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