皆さん、メタボリックシンドローム(メタボ)に悩んでおられませんか。
運動をしたくても時間が取れず、せめて仕事で頑張ったご褒美に晩御飯はおいしいものを、と考えてしまうと、対策はなかなか取れません。
私が医師になった38年前にはメタボという呼称もなく、漠然と、老人病として60歳以降に起こる病態と感じていましたが、徐々に成人病という概念となり、40歳前後から60歳代の働き盛りの人々に発生率の高い病態として理解されるようになってきました。しかし、1997年以降、高血圧、糖尿病、動脈硬化などの病態が30歳代の若い世代にもよく見られるようになったことから、生活習慣病(メタボ)と呼称変更が行われています。生活習慣や食生活が変化するにつれ、小児期でのメタボも今や当たり前の状況になってきています。
もっと驚くべきこととして、これらメタボの源は、胎児期にあることがわかってきました。DOHaD(developmental origins of health and disease)とは、将来の健康や特定の病気へのかかりやすさは、胎児期や生後早期の環境の影響を強く受けて決定される、という概念です。つまり、メタボの根源は胎児期の環境にある、という仮説です。「小さく産んで大きく育てる」というのは、決して良いことではなく、メタボになりやすいことを物語っていることになります。この30年くらいの間に日本の出生体重は男児で190g、女児で180g減少し、2500g未満の低出生体重比率は9.6%と、OECD25カ国中第1位で、平均値(6.8%)を大きく上回っています。これから先、日本はメタボ大国になってしまう可能性が大です。また、DOHaD仮説では、これらの体質は次世代に引き継がれます。つまり、負のスパイラルに陥ってしまうということとなります。少子高齢化に加えてメタボ人口の増加となります。
中高年層のメタボ対策と同時に、胎児・小児のメタボ対策にも本格的に取り組むべき時代になってきました。これから解明していかなければならない大きな課題です。