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アウトドアライフの勧め[炉辺閑話]

No.4889 (2018年01月06日発行) P.134

中川 隆 (愛知医科大学災害医療研究センター教授)

登録日: 2018-01-09

最終更新日: 2017-12-22

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日本に住む限り、地震・津波をはじめとする自然災害を完璧に避けて生活することは不可能に等しく、「それなりの覚悟」の上で住むしかない。1995年の阪神・淡路大震災、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震をはじめとする大きな地震が、ここ20余年のうちに度々起こっている。

日々平和で快適な生活を送っている私たちが、一瞬にして不自由この上ない避難所生活を余儀なくされる。体育館など避難所の光景は、基本的には今も昔も変わらない。最近は災害関連商品の開発も進み、段ボール製ベッドや間仕切りが活用され、以前よりずいぶん避難所生活も改善したようだが、相変わらず雑然と床に布団、毛布を敷き、プライバシーについても十分とは言い難い。

登山家の野口 健氏が熊本地震の際、益城町のテント村運営支援に貢献した話はよく知られている。避難所の体育館も損壊し、安全確保ができず、以前より氏と繋がりがある自治体の全面的なバックアップのもとに実現したという。さらに、氏がネパールで支援活動を実践してきたことから、今度はネパールの人々から恩返しの支援もあったという。とても温かい話である。テント村のお陰で車中泊をせずにプライバシーもある程度確保され、避難者の方々も苦痛が軽減したことと思う。

不自由だらけの体育館あるいはテント生活で、最も悩ましいのがトイレであろう。こればかりは誰もが直面する不快な経験である。トイレに行きたくないから、と飲水を控え、挙句は脱水となり、エコノミークラス症候群の危険性が高まることは、一般の人もよく知るようになった。さらに、最近の災害用簡易トイレはかなり完成度が高く、生理現象対応も以前ほど苦痛ではないかもしれない。

避難所生活を楽しむ、などと悠長な気分には到底なれないが、したたかに生き残るためには、日頃からアウトドアに慣れ親しむことが大切と思う。すし詰め状態の山小屋で寝ること、少々目を背けたくなるようなトイレでも用を足すことを厭わない、ある種の逞しさが必要である。便利になり過ぎた生活を思えば思うほどつくづく思う。

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