現在,①posterior,②right/medial uncinate,③mesenteric,④left posterior,⑤anterior,⑥superiorの6種類のアプローチ方法が報告されている1)。これらの術式に共通するのは,最初に上腸間膜動脈(SMA),および上腸間膜静脈(SMV)周囲の剝離を行い,下膵十二指腸動脈(IPDA)の処理を先行することでR0切除の可否を早期の手術操作で確認することができ,手術適応の適正化とR0率の向上に有用である点,と考えられている。
当教室では腸回転解除法を用いたアプローチ2)を標準術式としており,Kocher授動術の後に腸回転を解除する。それにより,mesopancreasおよび小腸間膜はSMAから右方へ広がる水平面となり,IPDAと第一空腸動脈(J1A)の共通幹や下膵十二指腸静脈(IPDV)も同定しやすくなるため動脈→静脈の順番で結紮切離ができ,膵頭部のうっ血による術中出血の軽減につながる。したがって,この方法もartery-first approachのひとつと考えられる。また,SMA周囲神経叢郭清においても,視野が広いため浸潤範囲も同定しやすく,広い範囲での郭清を防ぎ術後の難治性下痢の発症を抑える効果がある。さらに,門脈合併切除例に関しても門脈遮断時間を短くするために摘出の最終段階で門脈を切除することができる。mesopancreasの腸間膜化・単純化により,経験の少ない術者でも容易かつ合理的に手技を行うことができる。
【文献】
1) Sanjay P, et al:Br J Surg. 2012;99(8):1027-35.
2) Sugiyama M, et al:Surgery. 2016;159(5):1325-32.
【解説】
横山政明 杏林大学消化器・一般外科