No.4893 (2018年02月03日発行) P.20
二木 立 (日本福祉大学相談役・大学院特別任用教授)
登録日: 2018-02-05
最終更新日: 2018-01-31
マスコミの終末期ケア(費用)についての報道が最近また増えています。私も、昨年来「全国紙」2紙の取材を受けました。この種の取材は2000年前後から受けていますが、今回は新たに、在宅訪問医が在宅での看取りにより、医療介護費の削減が可能と報告していることについての見解を求められました。代表的な論者は、金城謙太郎医師(第16回日本在宅医学会大会, 2014)、村上典由医師(第17回日本在宅医学会大会, 2015)、小笠原文雄医師(『なんとめでたいご臨終』小学館,2017)等です。
本稿では、まず3氏の言説とその妥当性を検討します。次に、最近、自宅死亡割合が一進一退であり、今後それを大幅に増やすことが困難と私が判断している理由を述べます。
実は、自宅での看取りは入院医療に比べて大幅に安上がりとの主張は、厚生労働省も小泉政権時代の2005年8月に行いました。同省は、食道がん術後で「癌性疼痛、癌性発熱等の症状悪化」のある患者を自宅で看取った場合の最期の1か月間の医療費は57.7万円であり、入院での看取り115万円の約半分と推計しました(「終末期の医療費・制度別実効給付率について」)。ただし、これは極めて重症な例外的患者をモデルにした机上の計算で、しかも訪問看護・介護費用等は含んでいませんでした。
それに対して、上記3医師の検討は、実際に在宅で看取った患者を対象とし、しかも医療・介護の両方の費用(以下、公的費用)を含んでいます。しかも、金城・村上氏は対照群として入院死亡した患者の医療費も示しています。