世界保健機関のグローバルデータに基づくと,年間17億人が下痢症に罹患し,5歳以下の乳幼児52万5000人が死亡している。その主な原因のひとつにウイルス性下痢症がある。わが国では,食中毒統計によると年間の食中毒患者数は2~3万人であり,その半数以上をノロウイルス感染が占めている。また,推計年間100~300万人に上るノロウイルス胃腸炎患者を数十年にわたり出し続けている。
毎冬,襲い来るノロウイルス感染症に立ち向かうには,医療に携わる者が,最新のウイルス学的情報や疫学情報に基づき,的確にノロウイルス感染症を診断し,アウトブレイクを防ぐ手段を身につける必要がある。本特集では,それぞれの分野の専門家に執筆を依頼し,ノロウイルスの感染制御に役立つように企画した。本特集が少しでもノロウイルス患者の減少につながれば幸いである。
1 最新の流行状況と新型ノロウイルス
木村博一(群馬パース大学保健科学部検査技術学科教授)
長澤耕男(千葉大学大学院医学研究院小児病態学)
藤田清貴(群馬パース大学保健科学部検査技術学科教授)
2 ノロウイルスの臨床診断・検査の特徴と結果の解釈
本村和嗣(大阪健康安全基盤研究所微生物部ウイルス課総括研究員/ 大阪府感染症情報センターセンター長)
3 医療現場におけるアウトブレイクの予防と制御
谷口清州(国立病院機構三重病院小児科,臨床研究部部長)