オスグッド・シュラッター病は1903年に報告された骨端症であるが,現在でも動物モデルが確立されておらず,詳細な病態は不明である。従来は身体所見と単純X線写真により診断されてきたが,運動器領域における超音波診断装置の普及に伴い,これまで観察することができなかった軟部組織の状態を観察することが可能となり,オスグッド・シュラッター病の病態解明に寄与している。
オスグッド・シュラッター病は発育期における急激な骨成長と筋・腱成長のバランス不均衡や,脛骨粗面部の力学的脆弱部に大腿四頭筋による反復牽引力が加わることによる二次骨化中心の部分的な裂離で発症する。さらに繰り返しの刺激が加わると,膝蓋腱周囲,膝蓋下脂肪体や深膝蓋下包に影響が及び症状が遷延する,と考えられている。病初期は二次骨化中心の部分裂離が病態の中心であり,4週間程度のスポーツ活動の制限で裂離部の癒合を促す。病状が進行し,超音波所見で膝蓋腱周囲への影響が観察された場合には,浅膝蓋下包および深膝蓋下包に超音波ガイド下注射を行い,膝蓋下脂肪体に血流シグナルを認める場合には,膝蓋下脂肪体に超音波ガイド下注射を行う。一方,裂離した二次骨化中心の骨化が完了している遺残性オスグッド・シュラッター病では,深膝蓋下包に超音波ガイド下注射による治療や,保存療法に抵抗する場合には骨片摘出術を行う。
超音波診断装置を駆使することにより,オスグッド・シュラッター病の病期分類が可能になり,新しい治療アプローチが可能になった。
【解説】
中瀬順介*1,土屋弘行*2 *1金沢大学整形外科 *2同教授