母指手根中手(CM)関節症の治療の主体は保存的治療であるが,近年の手術法の進歩で手術的治療を選択する頻度が増加している
手術的治療の目標は,除痛に加えて①支持性,②可動性,③長期安定性の獲得であり,病期の進行度ごとに数多くの手術法が報告されている
進行期症例に対しては,関節形成術,関節固定術,人工関節置換術などが行われているが,特に欧米では主に関節形成術が実施されている
多くの手術法の利点と欠点を熟知した上で,病期の進行度に加え患者1人ひとりの年齢や活動性に応じて最も適した手術法を選択することが重要である
母指手根中手(carpometacarpal joint:CM)関節症は閉経後の女性に多くみられる疾患で,母指基部の疼痛と腫脹を呈し,家事動作などの障害を生じるため,患者の苦痛は大きい。
X線による検討では閉経後女性の25%に関節症変化を認めたとする報告もあり1),20%の女性が何らかの症状を有し,その15~20%に手術的治療が必要と言われている。男女比は1:10程度とされ,男性の場合は発症年齢がやや若く外傷後に生じる関節症変化も多い。病期分類としてEatonらのX線分類2)3)(図1)がよく用いられるが,X線上の進行度と症状が必ずしも一致しないので,すべての症例でまず保存的治療を行うのが一般的である。
しかし,保存的治療で改善しない症例には手術的治療が必要となり,数多くの手術法が報告されている。特に,進行期症例に対する関節形成術,関節固定術,人工関節置換術などが代表的な手術法であるが,関節症変化を認めない早期症例に対しては靱帯再建術(Eaton&Littler)2)3)や第1中手骨伸展骨切り術に加え,最近は鏡視下手術も試みられている。
そこで本稿では,進行期症例に対する代表的な手術的治療について,最近の動向と手術法の概略を解説する。